ウェスタールンド1のエキゾチックな恒星の人口
The exotic stellar population of Westerlund 1

この新しく紹介されている散開星団ウェスタールンド1(Westerlund 1)は、 南の星座アラ(Ara:the Altar:祭壇座) の約 12,000 光年にあり、ガスとダストの巨大な星間の雲の背後に存在している。1961年にオーストラリアの天文学者ベングト・ウェスタールンドによって発見された。ウェスタールンド1は、極限恒星物理学の研究のための比類のない自然の実験室であり、天文学者達が我々の銀河系で最も重い星がどのように生き、どのように死ぬかを見るのを助けている。

ウェスタールンド1のユニークな魅力は、その大規模、高密度で多様な大質量な星群であり、星の数やスペクトルのタイプと進化の段階の豊富さの点で、他の既知のミルキウェイ銀河団には対応できるものがない。この星団で確認されたすべての星は進化しており、非常に巨大で、ウォルフ・ライエ星、OB超巨星、黄色の超巨星(太陽100万個分の明るさ)、明るい青色の変光星など、あらゆる星の分類にまたがっている。このような星の寿命はかなり短いために、ウェスタールンド1は天文学的には非常に若い。天文学者達は、この星団の年齢を350万年から500万年の間と推定(正確な年齢はまだ議論の余地がある)しており、我々の銀河系で生まれたばかりの星団となっている。将来的には散開星団から球状星団に進化する可能性が高いと考えられている。これらは、重力によって結合された古い星のほぼ球形の密集した集合である。

現在、我々の銀河系では毎年ほんの一握りの星しか形成されないが、昔は状況が異なっていた。ミルキウェイ銀河は、かつてはもっと多くの星を生み出し、約100億年前には年間数十から数百の星を生みだすピークを迎え、その後、徐々に減少していると思われる。天文学者達は、この星形成の大部分は、「スーパースタークラスター」として知られる巨大な星団で起こったと考えている。これらは、太陽の1万倍以上の質量を含む若い星団で、信じられないほど小さな体積に詰め込まれている。それらは、星や惑星が形成される可能性のある最も極端な環境を表している。我々の銀河系にはまだいくつかの超星団しか存在していないが、それらは我々の銀河の星のほとんどが形成されたこの初期の時代についての重要な手がかりを提供している。

ウェスタールンド1は、スーパースタークラスターの印象的な例である。何百もの非常に重い星が含まれており、太陽の約100万倍の輝きで輝いているものもあれば、太陽の2千倍の大きさ(土星軌道と同じくらいの大きさ)のものもある。実際に、太陽系がこの注目すべき星団の中心に位置していたら、我々の空は満月と同じくらい明るい何百もの星でいっぱいになり得る。それは、ミルキウェイ銀河でこれまでに確認された中で最も巨大でコンパクトな若い星団のように見える。天文学者達は、この極端な星団が太陽の 50,000 〜 100,000 倍の質量を含んでいると考えているが、そのすべての星は直径6光年未満の領域内にある。それでも、ミルキウェイ銀河に残っているこれらのスーパー星団の中では最大であり、地球に最も近いスーパー星団である。これらの特性によって、ウェスタールンド1は、スーパー星団の環境が星や惑星の形成過程に与える影響、および広範囲の質量にわたる星の進化を研究するための優れたターゲットとなっている。

ウェスタールンド1の大質量の星の数は、それが周囲に非常に大きな影響を与えることを示唆している。この星団には非常に多くの大質量星が含まれているために、4000 万年未満の間に 1500 個以上の超新星が発生することになる。この超恒星団は、現在、天文学者達に、宇宙で最も極端な環境の一つに対するユニークな視点を提供している。ウェスタールンド1は、星、特に大質量星がどのように形成されるかについて、詳細な情報を求める長年の探求において、新たな機会をより確実に詳細で提供してくれるだろう。

このイメージは、ウェッブの近赤外線カメラ(NIRCam)を使用した拡張ウェスタールンド1および2散開星団調査(EWOCS)の一部として撮影された。この調査は、ウェッブ宇宙望遠鏡(GO 1905、PI: M. G. Guarcello)によるものであり、太陽に最も近い超恒星団の二つであるウェスタールンド1とウェスタールンド2のスターバースト領域における星と惑星の形成と恒星の進化を研究することを目的としている。

ウェッブ宇宙望遠鏡は、赤外線での比類のない性能によって、天文学者達に局所的なスーパー星団の低質量の星の集団を初めて明らかにし、これらの星団の最も重い星の周りの環境を研究する機会を提供している。ウェッブ宇宙望遠鏡による超星団の大質量の星の観測は、これらの星からのフィードバック(恒星風、超新星、その他の放出物質)が、周囲の環境や親の雲の内の星形成プロセス全体にどのように影響するかを明らかにすることができる。

<画像の説明>:望遠鏡の光学系により、それぞれに六つの大きな回折スパイクと二つの小さな回折スパイクを持つ明るい星の密集した集団。それらは、集団内の我々からの距離に応じて様々な明るさとサイズがあり、さまざまな種類の星を反映したさまざまな色がある。星団の中や周囲には、星団に照らされて渦巻く赤いガスの塊が見られる。星団内の小さな星は、遠くの星や銀河の背景に溶け込んでいる。

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Oct 04, 2024    


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