地球の温暖化はますます激しく複雑になり、地球のあちこちで異常現象が起きています。NASAでは、多数の観測機からの、ほぼリアルタイムなデータとイメージを使って、地球全体を監視しています。左の図はその艦隊の一部です。このコーナーでは、年単位の、地域別の、あるいは総合的な、気象環境やその分析などを掲載しています。

9月30日(月)
歴史的な低さに近い北極海の海氷、減少し続ける南極の氷

NASAと国立雪氷データセンター(NSIDC)の研究者達によると、この夏、北極海の海氷は北半球で歴史的な低水準に後退し、2024年9月11日に、その年の最小の程度まで溶ける可能性が高いとのことである。この減少は、北極海の氷面積が縮小し薄くなるという数十年にわたる傾向を続けている。

北極圏の凍った海水の量は、氷が解けて季節ごとに再び成長するために年間を通じて変動する。科学者達は、これらの変動をグラフ化して、北極圏が気温と海水温の上昇、および融解期の長期化に対して時間の経過とともにどのように反応するかの全体像を構築する。過去46年間、衛星は、夏に融解が多く冬に氷の形成が少なくなるという持続的な傾向を観察してきた。

海氷の変化をリアルタイムで追跡することによって、極地の野生生物の生息地の喪失や変化から、北極圏や国際貿易ルートでの地域社会への影響まで、幅広い影響が明らかになった。

今年、北極の海氷は428万平方キロメートルの最小限の範囲に縮小した。これは、1981年から2010年の夏の終わりの平均である622万平方キロメートルを、194万平方キロメートル下回っている。氷の覆いの差はアラスカ州よりも広い地域に及んでいる。海氷面積は、氷が 15% 以上集中している海の総面積として定義される。

衛星の記録で7番目に低い
今年の最小値は、2012年9月に記録した史上最低の339万平方キロメートルを上回っている。海氷の被覆率は年ごとに変動する可能性があるが、1970年代後半に衛星による氷の記録が始まって以降、減少傾向にある。NSIDCによると、それ以来、海氷の損失は年間約 77,800 平方キロメートルである。

科学者達は、現在、国防気象衛星計画の衛星に搭載されたパッシブ・マイクロ波センサーからのデータと、NASAと米国海洋大気庁(NOAA)が共同で運用している Nimbus-7 衛星からの追加の履歴データを使用して海氷の面積を測定している。

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9月24日(火)
ステーション科学、トップニュース:2024年9月13日

ペルーの熱帯林の衛星 3D イメージングは、リモートセンシングによる葉の形の測定が、樹木の高さなどの構造データよりもバイオマス生産のより正確な予測を提供できる可能性があることを示した。森林に貯蔵または隔離された炭素は、気候変動を引き起こす排出量を相殺するのに役立ち、熱帯林バイオマスの推定値が改善されれば、研究者達は、これらの生態系とそのオフセット寄与をより、適切に評価できるようになる可能性がある。

全球生態系活力調査(GEDI:Global Ecosystem Dynamics Investigation)は、地球の森林と地形の高解像度の全球観測を提供する。これらの観測結果は、炭素と水の循環プロセス、生物の多様性、および植生に貯蔵された炭素の定量化や将来の炭素貯蔵の可能性など、生息地に関する情報を提供する。研究者達は、新しい衛星ミッションからのデータと、 GEDI の動的植生モデルと統合することによって、熱帯林のバイオマスの推定値をさらに改善できるという考えを示している。

イメージは国際宇宙ステーション(ISS)の外部に設置された冷蔵庫サイズの全球生態系動態調査装置である。

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9月20日(金)
アラスカの象徴的なコロンビア氷河は依然として後退している

アラスカ南部のコロンビア氷河(Columbia Glacier)は、長い間、世界で最も急速に変化する氷河の原型だった。今日、地球上には他にも潮汐水氷河が存在し、総合的に海面上昇に寄与する可能性が高いとして、科学者達から注目を集めている。その間、コロンビア氷河の残りの部分は、数十年にわたって後退と減小の過程を続けている。

潮水氷河(tidewater glacier)の氷は陸地で発生し、斜面を下って海水に流れ込み、氷山の分離によって氷河は質量を失う。コロンビアの氷は、海抜 3,050 メートルの氷原から下り、チュガッチ山脈(Chugach Mountains)の側面を下り、プリンスウィリアム・サウンド(Prince William Sound)につながるフィヨルドに流れ込む。この氷河は、かつてコロンビア湾を南に横切ってヘザー島(Heather Island)に達していた。しかし1980年代以降、それは、その総体の厚さと体積の半分以上を失い、その前線は湾の20キロメートル以上北に後退した。

左上のイメージは、2019年(右上)と2024年(左下)の夏における氷河の位置を示し、より最近の変化の一部を示している。これらはランドサット8号でとられた.

氷河の本流と西の支流では顕著な変化が続いている。この氷河は2011年頃にこの二つの支流に分かれた。

<ひとこと>: 左上に示された左右のイメージの比較を見るにはリンク先から。

9月13日(金)
NASA、2024年夏をこれまでで最も熱い夏と評価

科学者達は、1880年まで遡って、地球の気温を任意の月や地域の温度をより確実に追跡できる新しい最先端のデータセットも共有した。

NASAのゴダード宇宙研究所(GISS)の科学者達は、1880年に世界的な記録が始まって以来、2024年8月が、地球で最も暑い夏となる、月間気温の新記録を樹立したと発表した。この発表は、新しい分析が、NASAの約145年前の気温の記録に対する信頼性をサポートする中で行われた。

北半球の夏、2024年の6月、7月、8月を合わせると、NASAの記録にある他のどの夏よりも摂氏約 0.1 度暖かく、2023年に記録したばかり値を僅かに上回った。2024年の夏は、1951年から1980年までの平均の夏よりも摂氏 1.25 度暖かく、8月だけでも平均より摂氏 1.3 度暖かかった。

「複数の記録からのデータによると、過去2年間の温暖化は拮抗しているように見えるが、強いエルニーニョの年を含め、その前年に見られたものをはるかに上回っている。これは、人間が引き起こした、気候の温暖化が続いていることを明確に示している。」

NASAは、数万の気象観測所で得た地表の気温データと、船舶やブイベースの機器からの海面温度から、 GISS 表面温度分析と呼ばれる温度記録をまとめている。また、南極大陸からの測定値も含まれている。解析の手法では、地球上の温度ステーションの間隔がさまざまであることや、計算に歪みを与える可能性のある都市の暖房の効果が考慮されている。

温度記録の新たな評価
この夏の記録は、コロラド鉱山大学、全米科学財団、米国大気海洋局(NOAA)、NASAの科学者達による新たな研究により、NASAの全球および地域の気温データに対する信頼性がさらに高まったことによるものである。

--- 以下略。

<ひとこと>: 以上要点のみ。大判はイメージをクリック(タップ)。

<出典>: Sally Younger(著者名です)

9月10日(火)
NASAの新しい調査、大規模なカナダの火災からの炭素排出量を集計

このような極端な山火事は、地球の気候に大きな影響を与え続けるだろう。

NASAの科学者達は、カナダのここ数十年で最も暖かく乾燥した気候に刺激され、2023年の極端な森林火災により約6億4千万トンの炭素が放出されたことを発見した。これは、大工業国の年間化石燃料排出量に匹敵する規模である。NASAは、変化する地球を理解するための継続的なミッションの一環として、この研究に資金を提供した。

研究チームは、衛星観測と高度なコンピューティングを使って、2023年5月から9月にかけて、ノースダコタ州とほぼ同じ面積を焼失した火災の炭素排出量を定量化した。8月28日にネイチャー誌に掲載されたこの新しい研究は、NASAのジェット推進研究所の科学者達によって主導された。

その結果、カナダの火災は、2022年全体でロシアや日本が化石燃料から排出した炭素数(それぞれ約4億8千万トンと2億9千万トン)よりも、5カ月間で放出された炭素が多いことが分かった。山火事と化石燃料の燃焼の両方から排出される二酸化炭素(CO2)は、直ちに温暖化を引き起こすが、科学者達は重要な違いがあると指摘している。森林は、再生するにつれて、火災から排出される炭素の量は地球の生態系に再吸収される。化石燃料の燃焼から排出される CO2 は、自然のプロセスでは容易に相殺されない。

大気汚染を測定するために設計されたこのヨーロッパ宇宙機関の装置は、カナダ上空の火災の煙を観測した。この対流圏監視装置(TROPOMI:TROPOspheric Monitoring Instrument)は、2017年から地球を周回しているセンチネル5P衛星に搭載されている。 TROPOMI には、大気中の微量なガスと微粒子(エアロゾル)を測定およびマッピングする四つの分光計がある。

科学者達は、火災の最終結果である火災シーズン中の大気中の一酸化炭素(CO)の量から始めた。次に、その量の CO を生成するために排出量がどれほど大きかったかを「逆算」した。彼らは、火災の煙の中の二つのガスの間の比率に基づいて、放出された CO2 の量を推定することができた。

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9月9日(月)
成層圏における一連の稀な擾乱

南極大陸の上空は不安定な冬だった。大陸の氷の表面から約30キロメートル上空、成層圏と呼ばれる層では、2024年7月から一連の温暖化が発生した。

南極大陸の成層圏の7月の気温は、通常、摂氏マイナス80度である。7月7日、成層圏の中央部の気温は15度上昇し、南極地域の成層圏で観測された7月の最も暖かい気温の記録を樹立した。その後、7月22日には気温が下がり、8月5日に17度上昇した。

この大気層の西風は、冬に南極点を一周し、時速約300キロメートル移動し、極渦と呼ばれるものを形成する。しかし、この対称的な周極性の流れを乱す何かが起こり、風が弱まり、流れの形が変わることがある。南極を循環する代わりに極渦は細長くなり、風は弱まる。風が弱まると南極大陸の成層圏がかなり温暖化する。

図は、2023年8月5日(左)と2024年8月5日(右)の中部成層圏(高度約30キロ、気圧10ヘクトパスカル)の気温を示している。極渦の伸びと極に近い温度の上昇は、2024年の図で明らかである。

下の図は、2024年8月5日の成層圏のポテンシャル渦度---気団がどのように回転しているかを表す量---を示している。電位渦度の高い領域は黄色で示され、時計回りに循環している。電位渦度の低い領域は紫色で、反時計回りに循環している。極渦は細長く弱まり、風の流れは通常の円形のパターンではなく、ピーナッツのような形をしていた。

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9月5日(木)
NASAのミッション、極地の熱放出のスナップショットを初めて取得

PREFIRE(Polar Radiant Energy in the Far-Infrared Experiment:遠赤外実験装置による極地放射エネルギー)ミッションは、北極と南極大陸が宇宙にどれだけの熱を放射し、それが地球の気候にどのように影響するかについて、より詳細な理解を深めるのに役立つ。

NASAの最新の気候ミッションは、北極と南極の環境が宇宙に放出する遠赤外線の形での熱量に関するデータの収集を開始した。遠赤外線実験装置における極放射エネルギー(PREFIRE)によるこれらの測定は、気候変動が地球の、氷、海、天候にどのように影響するかをより正確に予測するための鍵となる。

PREFIRE の二つのシューボックスサイズのキューブ衛星またはキューブサットの一つは、5月25日に、ニュージーランドから打ち上げられ、続いて6月5日にその双子が打ち上げられた。最初のキューブサットは、7月1日に科学データの送り返しを開始した。2機目のキューブサットは、7月25日に科学データの収集を開始し、このキューブサットのGPSシステムの問題が解決された後、ミッションのデータを公開する。

PREFIRE ミッションは、研究者達が、北極と南極が何時、何処で、波長15マイクロメートル以上の遠赤外線を宇宙に放出するかについて、より明確な理解を得るのに役立つ。これには、地球から逃げる熱量に、大気中の水蒸気と雲がどのように影響するかが含まれる。雲や水蒸気は地球の表面近くに遠赤外線を閉じ込めることができるために、温室効果として知られるプロセスの一部として地球の気温を上昇させる可能性がある。これは、二酸化炭素、メタン、水蒸気など、地球の大気中のガスが断熱材として機能し、惑星から放出される熱が宇宙に逃げるのを防ぐ場所である。

地球は熱帯地方で太陽のエネルギーの多くを吸収している。天候と海流は、その熱を北極と南極大陸に運ぶが、北極と南極大陸は日光がはるかに少なくなる。氷、雪、雲などの極地環境は、その熱を大量に宇宙に放出し、その多くは遠赤外線の形で放出される。しかし、これらの排出量は体系的に測定されたことがなく PREFIRE が期待される。

図の PREFIR データは、遠赤外線を含むいくつかの波長で地球から放出される放射線の強度を明るさで示している。黄色と赤は地球の表面から発生するより強い放出を示し、青と緑は、表面または大気中のより冷たい領域の低い放出強度を表している。

この動画の視覚化は、最初に打上げられたキューブサットによって、7月上旬にいくつかの極軌道で撮影された、中間赤外線放射(4〜15マイクロメートルの波長)のデータを示すことから始まる。続いて、グリーンランドの二つの峠にズームインする。軌道は垂直に拡がり、遠赤外線放射が大気中でどのように変化するかを示す。二つのパスが交差する領域に焦点を当てて終了し、これら二つの軌道間の遠赤外線放射の強度が、9時間で、どのように変化したかを示している。

二つの PREFIRE キューブ衛星は非同期の極軌道にあり、北極と南極の同じ場所を数時間内に通過し、同じ種類のデータを収集する。これによって、研究者達は、氷床の融解や雲の形成などの比較的短寿命の現象や、それらが時間の経過とともに遠赤外線放射にどのように影響するかを研究するために使用できる時系列の測定を得ることができる。

<ひとこと>: イメージのリンク先は動画 Youtube です。

出典:  Jet Propulsion Laboratory

9月2日(月)
地球が前例のない速度で温暖化している明確な証拠がある。
人間の活動が主な原因である。

左図: このグラフは、氷床コアに含まれる大気サンプルと最近の直接測定との比較に基づいており、産業革命以降に大気中の CO2 が増加したという証拠を示している。
右図:下記参照。

20世紀半ば以降の変化の速さは、数千年にわたって前例のないものである。

地球の気候は歴史を通じて変化してきた。過去80万年の間、氷河期と温暖化期のサイクルが8回あり、約1万 1700 年前の最終氷河期の終わりは、現代の気候の時代、そして人類文明の始まりを示している。これらの気候の変動のほとんどは、地球が受け取る太陽エネルギーの量を変化させる地球の軌道の非常に小さな変動に起因している。

以下、急速な気候変動の証拠(要点のみ。右にイメージ)。

  1. 地球の気温は上昇している。 - 地球の平均表面温度は、19世紀後半以降、摂氏約1度上昇している。
  2. 海が暖かくなっている。 - 海は増加した熱の多くを吸収しており、1069年以降、海の上部100メートルでは、摂氏 0.33 度の温暖化が見られた。なお、地球は、余分なエネルギーの90%を海に蓄えている。
  3. 氷床が縮小している。 - グリーンランドと南極の氷床は質量が減少している。NASAのデータによると、グリーンランドは1993年から2019年の間に年間平均 2,790 億トンの氷を失い、南極大陸は年間約 1,480 億トンの氷を失ったことが示されている。
  4. 氷河が後退している。 - 氷河は、アルプス、ヒマラヤ、アンデス、ロッキー山脈、アラスカ、アフリカなど、世界中のほぼすべての場所で後退している。
  5. 積雪量が減少している - 衛星観測によれば、北半球の春の積雪量は過去50年間で減少し、雪解けが早くなっていることが明らかになった。
  6. 海面が上昇している - 世界の海面は前世紀に約20センチメートル上昇した。これまでの20年間の割合は、前世紀のほぼ2倍であり、毎年わずかに加速している。
  7. 北極海の海氷は減少している - 北極の海氷の範囲と厚さは、過去数十年にわたって急速に減少している。

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出典:  地球温暖化の証拠

8月20日(火)
気象観測衛星2題

その1:北極圏気象衛星が打上げられ、より良い予報のための準備を整える---ヨーロッパ宇宙機関からの記事

ヨーロッパ宇宙機関の北極気象衛星が打ち上げられ、北極圏諸国だけでなく、世界全体の短期的な天気予報を強化するために、より頻繁なデータを提供する衛星の潜在的な編隊への道が開かれた。

この新しい気象衛星は、8月16日現地時間11時56分に、米国カリフォルニアのバンデンバーグ宇宙軍基地からスペースXのファルコン9ロケットで軌道に打上げられた。これは、ヨーロッパ宇宙機関の Φsat-2 ミッションを含む Transporter-11 ライドシェアミッションの一部として、 Exolaunch によって統合された。

この北極気象衛星はロケットから分離し、中央ヨーロッパ時間8月17日3時6分に、ノルウェーのスバールバル諸島の KSAT 地上局が、衛星が無事に軌道に到着したことを示す信号を受信した。

この北極気象衛星は、現在、正確な短期予報のためのデータが不足している北極圏の天気予報を改善することを目的としたプロトタイプのミッションである。この衛星は、既存の北極圏監視衛星に基づいて構築され、北極圏の正確で短期的な天気予報を提供する。

Φsat-2 は、ファイサット2(phisat-2)と発音され、革新的な地球観測のために人工知能(AI)を使用する利点をさらに実証するキューブサットである。僅か 22 x 10 x 33 cm のこの小型衛星には、最先端のマルチスペクトルカメラと、軌道上で画像を分析および処理する強力な AI コンピューターが装備されている。

その2:NASAが設計した温室効果ガス検出機器打上げ---ジェット推進研究所の記事

NASAのジェット推進研究所が開発した画像分光計は、地球温暖化の原因となる排出量の削減に役立つ、実用的なデータを提供する。

NASAが設計した最先端の温室効果ガス追跡装置を搭載した炭素マッパー連立組織(Carbon Mapper Coalition)の最初の衛星である Tanager-1 (Tanager はフウキンチョウ---中米·南米産の羽毛の美しい小鳴鳥)は、太平洋夏時間8月16日金曜日午前11時56分に、カリフォルニアのバンデンバーグ宇宙基地の打上台4Eから、スペースXのファルコン9ロケットで打上げられ、地球の軌道上にある。地上管制官達は、太平洋夏時間同日午後2時45分に Tanager-1 との通信を成功裏に確立した。

この衛星は、NASAのジェット推進研究所(JPL)で開発された画像分光計技術を使って、メタンと二酸化炭素の点源の排出量を、個々の施設や機器のレベルまで、地球規模で測定する。Tanager-1 は、非営利団体である Carbon Mapper が主導する、慈善団体の資金提供による官民連合の一部として開発された。 Tanager-1 を開発したPBCとジェット推進研究所は、ともに炭素マッパー連立組織()のメンバーであり、後日、ジェット推進研究所製の画像分光計を搭載した2機目の Tanager 衛星を打上げる予定である。

運用が始まると、探査機は1日あたり約 130,000 平方キロメートルの地球表面をスキャンする。カーボンマッパーの科学者達は、 Tanager-1 からのデータを分析し、メタンと二酸化炭素の独自スペクトルを持つガスの煙を特定し、その発生源を特定する。噴煙データはデータポータルで公開する。

メタンと二酸化炭素は、気候変動に最も寄与する温室効果ガスである。世界のメタン排出量の約半分は、主に化石燃料、農業、廃棄物管理産業などの人間活動によるものである。一方、大気中の二酸化炭素は1750年に比べて50%も増えており、これは主に石炭、石油、ガスの採掘と燃焼による増加である。

<ひとこと>: 記事は互いに独立していますが、ヨーロッパ宇宙機関の記事「ライドシェア」に示されているように。これ等は同一ロケットで打ち上げられています。

<出典>: Arctic Weather Satellite & Jet Propulsion Laboratory

8月19日(月)
この記事は、8月17日に、「今日の宇宙」に掲載したものの再掲です。

スバールバル、溶ける

2024年の夏、スバールバル諸島の氷冠は、非常に高い気温によって極端な融解のエピソードに見舞われた。

ノルウェー本土と北極点の間に位置するスバールバル諸島は、地球上で最速の温暖化の場所である。その陸地の半分以上は氷で覆われており、グリーンランドと南極大陸以外の地球の氷河面積の、約6%を占めている。

2024年7月下旬から8月上旬にかけて、気温が平均以上の摂氏4度前後で推移した北極圏のこの部分では、この暑さは、地球最北端の氷河があるスバールバル諸島に打撃を与え、雪と氷の急速な溶解を引き起した。

ランドサット8号の右上のイメージは、8月9日の、群島で2番目に大きな島である ノールアウストラン(Nordaustlandet Nordaustlandet)島 を指し、水と堆積物が海岸から北極海に流れ込んでいる。堆積物が、島を取り巻く水面に印象的な色の渦巻きを引き起こしている可能性がある。季節の雪が溶け、「ファーン(firn:万年雪)」と呼ばれる古い圧縮された雪の層によって、水色の氷河の氷の一部がむき出しになり、このイメージで露出している。

この大きな融解は8月に入っても続き、持続性のヒート・ドームがスカンジナビアの北極圏の一部を焼いた。スバールバル諸島の首都スピッツベルゲン島のロングイェールビーン(Longyearbyen)では、8月11日に、気温が摂氏 20.2 度に達した。8月の最高気温は、前月の月間記録を約 2.2 度上回っている。

<ひとこと>: 大判はイメージのリンクから。

<出典>: Earth Observatry

8月13日(火)
海氷が北西航路を詰まらせる

1906年に最初の船が伝説的な北西航路を通過して以来、400隻未満のこの場所の通過が記録されている。危険で予測不可能な北極海は、カナダ本土の北にある島々を航行する船員達に試練をもたらすが、この航路は、太平洋と大西洋の間の旅で距離を節約できるという点で依然として魅力的である。

温暖化が進む中、北極圏の海氷の厚さと面積が減少していることが、この通過を原因と一般的に考えられていますより長いウィンドウでより実行可能毎年夏に。しかし、近年では、Communications Earth & Environment の新しい分析では、南向きの氷の漂流がそれを詰まらせており、2007年から2021年の出荷可能シーズンの長さが大幅に短縮されている。

2024年7月13日、NASAの PACE(Plankton, Aerosol, Cloud, ocean Ecosystem)衛星に搭載された OCI(Ocean Color Instrument)は、北西航路のコアを形成する島々や水路について、ほとんど雲のない珍しいイメージを撮った。カナダ北部に沿ってこの航路をとる船は、ビクトリア島の北または南のいずれかを迂回する必要がある。各ルートには、氷が蓄積して長引く傾向がある独自の「チョーク・ポイント(choke points):隘路」がある。この画像では、氷がすべてのパスを塞いでいるように見えます。

国立雪氷データセンター(NSIDC)によれば、融解期のピークである7月15日に、北極の海氷面積がその日の衛星記録で7番目に低いランクにランクされたという事実にも関わらず、このことが観察された。カナダの列島の周辺では、そのほとんどが、ここに示されているように、海氷は、この時期としては記録的な低水準に近づいているように見える。

この40年間の衛星データは、北極の海氷面積が何十年にもわたって減少していることを示している。加えて、氷の面積が縮小するだけでなく、融解期が長くなり、海氷の寿命が短くなっている。2023年の米国大気庁(NOAA)によれば、1985年9月の夏季融解期の終わりには、4年以上経過した海氷が約250万平方キロメートルを覆っていたが、2024年9月には、古い氷は10万平方キロメートル未満を覆ってい

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8月1日(水)
NASAのデータ、7月22日が地球史上最も暑い日を示す

NASAが世界の毎日の気温データを分析した結果、2024年7月22日が、観測史上最も暑い日となった。今年の7月21日と23日も、2023年7月に設定された以前の日次記録を上回った。これらの記録的な気温は、主に温室効果ガスの排出という人間の活動によって引き起こされている長期的な温暖化傾向の一部である。NASAは、地球に対する理解を深めるというミッションの一環として、変化する地球の重要な長期観測データを収集している。

「これまでで最も暑い年だったが、この2週間は特に残酷だった。」とNASAのビル・ネルソン長官は述べている。「NASAは、20を超える地球観測衛星と、60年以上のデータを通して、地球がどのように変化しているか、地域社会がどのように準備し、適応し、安全を確保できるかについて重要な分析を提供している。」

この予備的な知見は、二つシステム(MERRA-2:Modern-Era Retrospective analysis for Research and Applications, Version 2 と GEOS-FP:Goddard Earth Observing System Forward Processing)のデータ分析から得られたものである。このシステムは、大気モデルを使用して、陸、海、空、衛星の機器からの何百万もの全球観測を組み合わせている。

この図では、 MERRA-2 の、1980年から2022年までの日次平均気温が白で、2023年の値がピンクで、2024年6月までの値が赤で示されている。 GEOS-FP による2024年7月1日から23日までの日常の地球気温値を紫色で示している。この結果は、欧州連合(EU)のコペルニクス地球観測プログラム(Copernicus Earth Observation Programme)の独立した分析とも一致している。分析には僅かな違いがあるが、時間の経過に伴う気温の変化と最も暑い日には広く一致していることが示されている。

<ひとこと>: 大判はイメージをクリック(タップ)。

<出典>: Goddard Digital Team

7月30日(火)
二酸化炭素が地球の大気中を移動するのを見る

我々は何を見ているのだろう?

この全球マップは、2020年1月から3月にかけて、風のパターンと大気の循環によって駆動されるガスが地球の大気中を移動する際の、二酸化炭素(CO2)の濃度を示している。

モデルの解像度が高いので、ズームインして、発電所、火災、都市から発生する二酸化炭素の排出量が増加し、大陸や海に広がる様子を確認できる。

二酸化炭素が大気中を移動するのを見る

2020年1~3月の全世界の CO2 ppm。このカメラは地球を遠くから周回する動きである。

二酸化炭素の発生源は何だろう?

中国、米国、南アジアでは、排出量の大部分が発電所、産業施設、自動車やトラックから発生している。一方、アフリカと南アメリカでは、排出量の大部分は、火災、特に土地管理、制御された農業の野焼き、森林伐採、および石油と石炭の燃焼に関連する火災に起因している。火災は燃えるときに二酸化炭素を放出する。

図が脈動しているように見えるのは何故だろう?

脈動には主に二つの理由がある:第一に、火災には明確な昼夜サイクルがある。通常、日中に再燃し、夜に消滅する。

次に、樹木や植物が光合成する際に二酸化炭素の吸収、放出が見られる。地球の陸地と海は二酸化炭素の約50%を吸収する。これらは天然の炭素吸収源である。植物は日中に光合成を行う際に二酸化炭素を吸収し、夜間に呼吸によって二酸化炭素を放出する。パルスの多くが、中緯度または高緯度の森林など、樹木の多い地域で発生していることに注意しよう。また、データは南半球の夏に取られたために、熱帯地方や活発な生育期であった南アメリカでは、より脈動していることがわかる。

脈動の一部は、地球の表面が日光によって加熱されると上昇し、夜に冷えると下降する、地球の境界層(大気の最下層900メートル)からも発生する。

それらを動かすデータ
これらのマップは、NASAの Scientific Visualization Studio (科学可視化スタジオ)によって、 GEOS (Goddard Earth Observing System) のモデルを使って作成された。GEOS は、スーパーコンピュータを搭載した高解像度の気象モデルであり、暴風雨システム、雲の形成、その他の自然現象など、大気中で何が起こっているかをシミュレートするために使用される。 GEOS は、 テラ(Terra)衛星の MODIS や、スウオミNPP(Suomi-NPP)衛星の VIIRS 機器など、地上観測や衛星機器からの数十億のデータポイントを引き出している。その解像度は、一般的な気象モデルの100倍以上である。

--- 以下略。

<ひとこと>: イメージのリンク先から動画 .mp4 をご覧ください。

<出典>: Earth Observatry

7月29日(月)
北米のスモーキーな空

2024年7月、カナダで発生した山火事は、煙が北米にも漂った。猛暑が続き、風の強い天候や雷雨が相まって、カナダのいくつかの州で火災の発火と拡大に拍車をかけた。7月24日現在、カナダでは989件の火災が発生しており、その半数以上がブリティッシュコロンビア州またはアルバータ州で発生している。

このアニメーション(注:イメージをクリック)は、2024年7月17日から24日までの、山火事の煙の濃度と動きを示している。それは、その期間に北米の空を広く襲ったカナダの火災からの粒子、一般には「すす」と呼ばれるブラックカーボンである。オレゴン州とワシントン州での火災による黒い炭素の痕跡も目立つ。

ブリティッシュコロンビア州とアルバータ州での山火事の活動は、アニメーションで示されている期間を通じて激化し、強風と雷雨に加えて記録的な高温が、いくつかの場所で、山火事の主要な条件を作り出した。7月21日には2万回、7月22日には3万8千回の落雷が報告され、そのほとんどが州の北東部で発生し、残りは南中部で発生した。

この嵐は、多数の新たな火災をもたらした。何百もの火災からの煙が、国中と南の米国中部に漂った。煙の空と空気の質の悪さが、ノースダコタ、カンザス、コロラド、ウィスコンシン州を含む、複数の州で報告された。

--- 以上、要点のみ。

<ひとこと>: イメージのリンク先は動画 .mp4 です。

<出典>: Earth Observatry

7月23日(火)
パキスタンの暑さを打ち負かす

猛暑が激しくなる中で、世界中の都市の人々は、気候変動によるよる厳しい夏の条件に直面している。その中で、パキスタン北部の都市ラホール(Lahore)では、人口の約10%しかエアコンを利用できず、かつ何十年にも亘って急速な都市化が進んできた。しかし、緑地を都市に組み込むことによって、温暖化を相殺できることが衛星データで明らかになっている。

パキスタン北東部のラヴィ川(Ravi River)沿いに位置するラホールは急成長する都市である。左の2024年5月16日に撮影したランドサット8号イメージでは、市街地はグレーで示されている。農地などの空き地が緑色に見える。市内には、いくつかの公園、都市の森、ゴルフコース、運動場、植物園、緑の植生のある墓地などがある。

イメージの右側は、2024年5月8日午後9時13分にNASAの生態系衛星搭載熱放射計実験装置、エコストレス(ECOSTRESS:Ecosystem Spaceborne Thermal Radiometer Experiment on Space Station)が観測した夜間の地表面温度(LST:land surface temperatures)である。それは、厳しい持続的な初夏の熱波の最中に、日中の気温が摂氏45度を超えることがあり、湿度を含めると摂氏49度のように感じられる暑さ指数を示している。

ECOSTRESS は、走査型の放射計を使用して、地表から放出される熱赤外線エネルギーを測定する。センサーは、気温ではなく地表面温度を測定することに注意しよう。

右に掲載した、より広範囲の ECOSTRESS マップでは、樹木が茂った地域、草が茂った地域、公園、農地などの緑地は、密集した開発地域よりも有意に涼しい(青と黄色)ことが分かる。 植生や水域は、コンクリート、アスファルト、スチールなどの一般的な建築材料ほど簡単に熱を吸収して再放出しない。 これによって、都市部と地方の郊外で数度の差が生じる「ヒートアイランド現象」が発生する。

<ひとこと>: 大判はイメージをクリック(タップ)。左上に示された比較イメージの大判は下のリンクから。

<出典>: Earth Observatry

7月22日(月)
エルニーニョ現象の終了

エルニーニョ現象は、約1年間にわたって東太平洋を温暖化させた後、2024年5月にようやく消滅した。この自然の気象現象は、何ヶ月にもわたって海水温に記録的な高値をもたらし、アフリカでは極端な降水、五大湖での氷の覆いの薄さ、アマゾンと中央アメリカの厳しい干ばつを招いた。2024年7月現在、東太平洋は中立期にあるが、その猶予は短命に終わるかも知れない。

東太平洋の熱帯の緯度では、貿易風の強さに反応して海面が周期的に冷えたり暖められたりするが、これはエルニーニョ南方振動(ENSO)と呼ばれる現象である。次に、海洋の変化は大気の循環を混乱させ、一部地域では降雨量が激化し、他の人々には干ばつをもたらす。

2023年5月、エルニーニョが始まるサインである、東からの貿易風は弱まり、西太平洋からの水を暖め、米州の西海岸へ向かって動かされた。エルニーニョは2023年12月まで強まり続け、2024年5月中旬までに弱まった。

上の図は、2024年7月1日(右)に観測された、中部太平洋と東部太平洋の、平穏(右)と、エルニーニョのピーク付近の2023年12月4日(左)の海面高の差を描いている。赤の陰影は、海が通常よりも高かった地域を示している。青は平均よりも低い海面を示している。通常の海面条件は白く表示されている。NOAA(米国大気局)の気象予測センターからの報告によると、主要な熱帯太平洋監視海域(西経170度から120度)の12月の海面水温測定温度は、1991年から2020年の平均を摂氏2度上回っている。

<ひとこと>: 2024年7月15日に掲載された記事です。大判はイメージをクリック(タップ)。

<出典>: Earth Observatry

7月17日(水)
猛暑が米国の海岸を襲う

2024年6月、初夏の猛暑が東西米国を襲った。また、7月の気温はあまり緩和されていない。

左の地図は、2024年7月10日の米国全土の気温を示している。このマップは、衛星やその他のソースからの観測と、ジオス(GEOS :Goddard Earth Observing System)モデルでの、数式を使った大気中の物理プロセスを表している。最も濃い赤は、地上約2メートルでの、摂氏40度を超える温度を示している。

西部(右図)では、メキシコからカナダまで、ロッキー山脈の西側の多くの地域での猛暑の地域が見られる。米国気象サービス(NWS)によれば、温度は、7月10日に、共通的に、広範囲にわたる熱の危険を引き起す華氏100度(摂氏約37.7度)を超えた。同日、サウスカロライナ州からマサチューセッツ州までの東部の一部には、熱中症警報または注意報が発令された。

中西部の一部では、サイクロン「ベリル」の残骸が北東に進路をとったために、平年より気温が低かった。しかし、テキサス州南東部では、7月10日の気温は華氏90度(摂氏32.3度)台にとどまり、一方、暑さ指数は華氏100度(摂氏40度)を超えた。

<ひとこと>: 大判はイメージをクリック(タップ)。

<出典>: Earth Observatry

7月16日(火)
日本近海の海水温を比較する

<お断り>: 気象専門家ではないので、以下の解説には不正確あるいは誤りがあるかも知れません。掲載の本旨は“NASAの気象観測に関する大規模な取組”を紹介することにありますが、併せて近年の日本近海の海水温の上昇をとり上げます。

2020年との比較において、日本近海の海水温は確実に高まっているように見える。NASAは、NOAA(米国大気局)の観測を含む、多数の気象観測衛星からのデータを使って、統合的な地球規模の気象観測を行っている。

以下はその一部、NASAの膨大な世界規模のデータから。

上から、➀ 2024年7月13日の世界の海水温、
➁ 7月13日の日本近海の海水温、➂ 2024年1月1日(今年の冬)の日本近海の海水温、➃ 2020年7月26日(4年前の夏)の日本近海の海水温を抽出したものである。
2020年に比較した最近の北海道南東部の海面温度の上昇が特に顕著に見える。


以下は、最近発表された、NASAの気象変動に対する取組みの記事である。

NASA、気候変動への適応とレジリエンス計画の最新情報を発表

NASAは、木曜日、20以上の連邦機関とともに最新の気候適応計画を発表し、すべての人の利益のために気候変動の影響に対する連邦業務の回復力を高めるためのバイデン・ハリス政権の取組みの拡大を支援した。

更新された計画は、共通の原則と機会を通じて、公共部門と民間部門全体で気候レジリエンスへの投資を調整するのに役立つ、政権の国家気候レジリエンスフレームワークを前進させるものである。

NASAは、地球科学の世界的リーダーとして、衛星やその他の資産からの重要なデータや、気候システムに関するその他の観測や研究を研究者達に提供している。また、その知識を応用し、気候変動について一般の人々に知らせることにも取り組んでいる。NASAは、これらの取り組みを優先し、その科学データ、ソフトウェア、および研究をすべての人が自由に利用できるようにするオープンな情報ポリシーを維持する。

また、気候変動や気候変動は、NASAのミッション遂行能力に影響を及ぼす可能性があり、NASAによる積極的な計画と行動が必要である。沿岸の洪水、異常気象、その他の気候変動の影響がNASAの業務を止めないようにするために、NASAは、気候災害分析を改善し、主要な資源と施設を保護するための計画を策定している。

バイデン大統領は、政権発足当初、大統領令 14008 号「国内外の気候危機への取り組み」を通じて、連邦政府機関に気候変動対策のための政府全体の取組みを主導するよう命じた。

--- 以下略。

<ひとこと>: イメージの源データは膨大です。ここではその一部のみ掲載しています。

<出典>: オリジナル

7月9日(火)
地球規模の温度マップ(7月7日)

アクア(Aqua)衛星に搭載された MODIS センサーからの日次地表面温度(ケルビン(K)度)。地表面温度は、砂漠の裸の砂、氷や雪に覆われた地域、葉に覆われた樹冠、さらには人工の建物や道路の温度など、地表にあるものすべての温度を提供するために、気温の測定とは異なる。地表面温度は、天候や気候パターンの変化を監視するのに役立ち、農業で農家が水の必要量を評価したり、霜害を判断したりできるようにするために使用される。

<解説>: NASAでは、多数の地球観測艦隊(左にその一例)からの、ほぼリアルタイムのデータとイメージを使って、様々な角度から地球を監視している。

この数日、日本では、「未だ梅雨の季節」というのに酷暑が続いている。しかし、世界規模の現実は、はるかに高温の地が、想像を絶する広域に広がっている。

この図は7月7日のデータから作成されている。

<ひとこと>: 大判はイメージをクリック(タップ)。

<出典>: Earth Now

7月8日(月)
熱に支配される地球

北半球は夏の始まりに過ぎないが、地球は既に焙煎されている。

ゴダード宇宙科学研究所の科学者達は、2024年5月が、NASAの全球規模の表面温度分析で最も熱く、通年の最高温度を記録したと報告した。 同様に、NOAAは、最近、2024年1月から5月にかけての気温が、175年ぶりの気温の記録を更新したと報告した。気象データの解析によれば、2024年6月19日、北半球は平年より摂氏 1.1 度高くなっている。

こうした状況の中、北半球は初夏の熱波が猛威を振るっている。米国、中東、南アジア、アフリカでも気温が急上昇した。一連の熱波は、多数の死者,電力網の被害をもたらしている。

このアニメーションは、2024年6月15日から6月25日までの間の、北アフリカ、中東、南アジアの一日平均の地上の気温を示している。これは、衛星観測と、ゴダード地球観測システム(GEOS)グローバルモデルによる、数式を使った大気中の物理プロセスを表している。最も濃い赤色の領域は摂氏40度を超える温度を示している。

報道によれば、デリーでは、6月18日に、夜間の気温が摂氏 35.2 度になり、ここ数十年で最も暑い夜になった。ギリシャでは、気温が 44.5°C まで急上昇し、学校や史跡が閉鎖され、サウジ国立気象センターは、メッカ巡礼中のメッカとその周辺の最高気温 49°C と報告した。

暑熱ストレスは、気象関連死の原因として世界最大であり、心血管疾患、糖尿病、精神疾患、喘息などの基礎疾患を悪化させる可能性があり、研究者達の計算によると、毎年約48万 9000 人が熱中症で死亡しており、その45%がアジア、36%がヨーロッパで発生している。

--- 以下略。

<ひとこと>: 記事は要点のみ。イメージのリンク先は動画 .mp4 です。

<出典>: Earth Observatry

6月27日(木)
ニューメキシコ州中南部を火災が襲う

2024年6月17日、ニューメキシコ州中南部で二つの山火事が燃え上がった。

スウオミ NPP 衛星は、世界時間6月18日午前8時10分にこのイメージを撮った。その火とその煙は、夜間の光の放出と反射を測定する機器を通して確認できた。ここでは、煙の一部が月からの光を反射している。

このイメージが撮影された頃、南フォーク(South Fork)の火災では、約 5,700 ヘクタールが焼失していた。ルイドソ(Ruidoso)の南の火災は、約 2,000 ヘクタールを焼いた。どちらの火災も、風が強く乾燥した状況の中で消防士達が避難活動を優先したために鎮火できなかった。

6月19日の嵐では、山の斜面を下る大雨が洪水をもたらしたために、この地域はさらに困難になった。火災で焦げた地域の土壌は水をはじき、鉄砲水が発生しやすくなる。さらに雷雨が続き、更なる雨が延焼を遅らせるのに役立った。しかし、6月21日の時点では、炎は封じ込められず、 23,000 エーカー以上延焼した。この火災により、数人の死者が出、約 1,400 棟の建物が被害を受けている。

州の大部分は、6月中旬に、ある程度の乾燥または干ばつの経験を受け続けた。ニューメキシコ州では、今年、これまでに368件の火災が発生し、 60,000 エーカー以上が焼失している。

 --- 以上、要点のみ。

<ひとこと>: 米国南西部では、毎年、激しい野火に襲われます。この記事はその始まりです。世界的な熱波が伝えられる中で、今年想定される激しい熱波は、一層の災害をもたらすかも知れません。大判はイメージをクリック(タップ)。

<出典>: Earth Observatry

6月26日(水)
マクラン海岸の岬と湾

国際宇宙ステーションに搭乗した宇宙飛行士がこの写真を撮影した。イラン南東部マクラン海岸。ここでは、著名な岬コナラク(Konarak)とポズム(Pozm)の小さな漁港を守っている。イメージ左上にチャーバハール・コナラク(Chabahar Konarak)国際空港が見える。

イラン南東部とパキスタン南西部のオマーン湾沿いの細長い陸地であるマクラン海岸(Makran coast)沿いにはいくつかの岬や湾が現れる。

湾の海岸線の長い曲線は、砂質の堆積物の蓄積を示している。この堆積物は、過去の海岸線の位置を明らかにする多数の半平行線として現れる。上部のチャーバハール(Chabahar Bay)湾の北岸でビーチの尾根が特によく発達しているように見える。

科学者達は、最近、岬と湾の気候変動、特に海面上昇の影響に対する脆弱性を調査した。この研究が実施されたのは、マクラン海岸の地殻隆起率が高いことが一因である。研究者らは、この岬の硬い岩石、隣接する湾が形成された侵食しやすい岩石よりも波の侵食を受けにくいと結論付けた。これらの湾は、波や海流が堆積物を移動するにつれて形を変えると予想される。湾の海岸線は、海面が上昇し、海岸線が侵食されるにつれて、さらに内陸に移動する可能性がある。あるいは、時間の経過とともに沿岸の堆積物が堆積するにつれて、海岸線が海に向かって進む場合もある。

<写真>: 2022年4月17日に、ニコン D5 デジタルカメラで 400 ミリ焦点距離で撮影された。これは国際宇宙ステーションクルーが撮った、地球観測施設とジョンソン宇宙センターの地球科学およびリモートセンシングユニットによって提供されている。

<ひとこと>: 大判はイメージをクリック(タップ)。

<出典>: Earth Observatry(June 23, 2024)

6月14日(金)
衛星のデータ、米国のメタン排出量の過小評価を示唆

メタンは気象の「超汚染物質」であり、二酸化炭素の30倍の温暖化を引き起こす。この短命だが強力な温室効果ガスは、現在、地球温暖化の全温室効果ガスの約3分の一を負っている。米国は、メタンの有効性のために、2030年までに、2020年のレベルから30パーセント広域な放出を減らすことを狙った、全球規模のメタンの誓約に調印した。

排出量を削減するための最初のステップは、大気中に放出される量を知ることである。新しい衛星ベースの分析において、科学者達は、以前の推定よりも2019年の米国本土からのメタンの排出量が多かったと計算した。

米国環境保護局(EPA:Environmental Protection Agency)は、埋立地、家畜運用、油やガス施設のような、既知の放射源の保有量を得ることによって、人間が原因となるメタンの放出を評価している。これらの放射は、その後、気候変動枠組み条約に報告された。これらの衛星観測と大気モデルは、この計測の高低の可能性を確認する方法として提供している。

科学者達の国際的なチームは、2019年の米国のメタン放出の高解像度マップをつくるために、 GEOS-Chem 大気移動モデルとセンチネル5衛星の対流圏監視装置(TROPOMI)からの観測を結合した。

このアプローチによって、大気への排出経路を、地上の発生源までさかのぼることができた。

左上の図は、2019年の人為的なメタン排出量の、衛星による推定値を示している。科学チームは、このマップを同年の EPA の温室効果ガス蓄積量と比較した。その結果、2019年の衛星由来のメタン排出量は EPA の推定値よりも13%多い。
衛星から派生したマップの最も明るい黄色は、排出量の合計が1平方キロメートルあたり50トン以上である場所を示しており、最高値は1平方キロメートルあたり384トンにも達した。

石油・ガス事業と家畜生産への衛星とモデルベースの推定値の、この二つの最大の情報源は、米国におけるメタンの割合が EPA の推定値よりそれぞれ12%と11%高かった。一方石炭採掘からのメタン排出量は28%少なかった。

3番目に大きな発生源である埋立地は EPA より推定50%多くのメタンを排出した。排出量の多い埋立地の作業は、毎年、温室効果ガス報告計画として報告が必要である。一部の埋め立て地では、保管されている廃棄物の量やその他の埋め立て地固有の情報に基づいて排出量を推定しているが、一方、他の埋め立て地では、彼らが捕らえた運用情報に基づいてメタンの排出量を推測しいる。なお、埋め立て地での操業や建設の変更など、一部の排出源は考慮されていない。

<ひとこと>: 大判はイメージをクリック(タップ)。

<出典>: Earth Observatry

6月13日(木)
NASAの分析、1年間の月次気温記録を確認

2024年5月は観測史上最も暑い5月となり、月間の気温が過去最高を記録したことがNASAの科学者達によって明らかになった。NASAのゴダード宇宙研究所(GISS)の科学者達によると、過去12か月間の地球の平均気温は、各月で過去最高を記録し、前例のない連続記録となった。

記録的な気温の連続は、主として温室効果ガスの排出による人間の活動によって引き起こされる、長期的な温暖化傾向に合致している。この傾向は過去40年間で顕著になってきており、19世紀後半に記録が始まって以来、これまでで最も暖かい10年となっている。この12カ月連続で記録的な気温を記録する前には、2015年から2016年にかけて、7カ月連続で記録的な気温が続いた。

--- 中間略 ---

NASAの分析では、温度のベースラインは数十年以上(通常は30年)で定義される。過去12か月間の地球の平均気温は、1951年から1980年の20世紀のベースラインを、摂氏 1.3 度上回った。これは、19世紀後半の平均に対して摂氏 1.5 度のレベルをわずかに上回っている。

地球の気温を計算するために、NASAの科学者達は、陸上の何万もの気象観測所に加えて、海面の船やブイに搭載された何千もの機器からのデータを収集している。この生データは、世界中の温度観測所のさまざまな間隔と、計算を歪める可能性のある都市部の暖房効果を考慮した方法を使って解析される。

沈静化するエルニーニョ、到着したラニーニャ
エルニーニョ現象やラニーニャ現象は、熱帯太平洋を交互に温めたり寒冷化させたりする現象であり、地球の気温は年によってわずかに変動する。2023年春に始まった強いエルニーニョ現象は、昨年の夏と秋の猛暑に拍車をかけた。

2024年5月現在、NOAA(米国海洋大気庁)気象予測センターの科学者達は、ラニーニャが、6から8月の間に49%、7月から9月の間に69%の確率で発生すると予測している。ラニーニャ現象は、熱帯太平洋の広い範囲を冷やすことで、今年の地球の平均気温を部分的に抑制する可能性がある。

--- 以下略。

<ひとこと>: 大判はイメージをクリック(タップ)。

<出典>: Sally Younger(著者名です)

5月28日(火)
南極の棚氷が氷山 A-83 を産む

2024年5月下旬、南極大陸のブラント棚氷(Brunt Ice Shelf)から、大きなくさび形の氷が割れたが、これは、過去数年間に、棚氷によって生成された一連の注目すべき氷山の最新のものである。

分離後間もなく、ランドサット9号の熱赤外線センサー2(SHOTS-2)が、この疑似カラーのペアを捕らえた。それらは、2022年以降、南極大陸、グリーンランド、北極海周辺で、氷河、氷棚、海氷の年間イメージ記録をとってきた、LEAP(Landsat Extended Acquisitions of the Poles:ランドサット極延長取得)と呼ばれる特別に延長されたデータ収集プログラムの一部である

このような熱イメージは、太陽が地平線の下にあって可視光のイメージが利用できない場合でも、科学者達が地球の極地を監視するのに役立つ。5月20日(左)と5月22日(右)に撮影されたこれらのイメージでは、黄色とオレンジ色は外洋や薄い海氷など気温が高い地域を示し、青色は氷山や棚氷の厚い氷など気温が低い地域を示している。氷山はすでに移動しており、氷山と棚氷の間のギャップが広がっていることからも明らかである。

ボルチ校のクリストファー・シューマン(Christopher Shuman)は、氷山の面積は約375平方キロメートルと推定している。米国国立氷河センターは、氷山 A-83 という名を確認した。

May 20, 2024May 22, 2024


<ひとこと>: 大判はイメージをクリック(タップ)。左上に示された左右のイメージの比較を見るには下のリンクから。

<出典>: Earth Observatry

5月27日(月)
モンゴメリー環礁露出

西オーストラリア州のキンバリー海岸には、オーストラリアおよび世界でも最大級の潮干差がある。コリア湾(Collier Bay)のモンゴメリー・リーフ(Montgomery Reef)では、干潮時に水位が急激に低下し、台地状のサンゴ礁が水面から数メートル浮かび上がる。

この地域に沿った平坦な棚のような地形のために、キンバリー海岸は潮汐の変化は特に顕著である。この2枚のイメージは、2024年の満潮(左)と干潮(右)のときのサンゴ礁を示している。左の満潮時のイメージは4月21日にランドサット9号によって、右の干潮時のイメージは4月29日にランドサット8号によって撮られた。

--- 中間略。

モンゴメリーリーフの構造は、完全にサンゴの産物ではない。この地形は、かつて約18億年前に形成されたドロマイト(dolomite)と砂岩でできた平らな頂上の陸生メサだった。最近では、この古代の建造物は、この古代の建造物は、特に、海洋生物の板で覆われている。

--- 中間略。

2016年の海洋熱波は、3回目の世界的な白化現象の一部であり、科学者達は、モンゴメリ・リーフやキンバリー海岸その他のサンゴ群集で広範囲にわたるサンゴの白化現象を報告した。

2024年4月、米国海洋大気庁(NOAA)は、世界のサンゴが4回目の世界的な白化現象の真っ只中にあることを確認したが、モンゴメリ・リーフでの白化現象に関する現地の報告はまだ出ていない。米国海洋大気庁(NOAA)の暑熱ストレスマップによると、西オーストラリアの南西部と赤道付近のサンゴは、2024年5月中旬には白化のリスクが高まっている。

<ひとこと>: 左上に示された左右二つのイメージの比較を見るには下のリンクから。

<出典>: Earth Observatry

5月15日(水)
洪水がポルトアレグレを飲み込む

2024年4月27日、ブラジル最南端のリオグランデ・ド・スル州に強風と集中豪雨をもたらす強い嵐が襲いかかった。一部の地域では、1週間足らずの間に300ミリメートル以上の雨が降り、川岸を越水させ、広範囲にわたる破壊的な洪水を引き起こした。

ランドサット8号は、5月8日に、浸水したポルトアレグレ(Porto Alegre)の繁華街のイメージを撮った。洪水は歴史地区を浸水させ、国際空港を閉鎖させ、主要なスタジアムを襲い、いくつかの高速道路を通行不能にした。

NASAのアクア衛星の中間分解能画像分光放射計(MODIS)は、洪水の最中と前の、5月6日と4月20日に、これらのイメージ(右上:4月20日、左下:5月6日)を得た。水はジャクイ川、カイ川、シノス川の堤防を越え、州都ポルトアレグレの一部を浸水させた。洪水は上流の他のいくつかの都市、町、農地にも流出した。流出した水、茶色の浮遊堆積物が、ポルトアレグレの南にあるパトスラグーンに流れ込んでいるのが見える。

--- 以下略。

4月20日5月6日

<ひとこと>: 大判はイメージをクリック(タップ)。

<出典>: Earth Observatry

5月8日(水)
雨がドニャーナ国立公園を蘇らせる

2024年春に、スペインの保護された湿地ドニャーナ国立公園(Doñana National Park)は、長引く干ばつから解放された。3月下旬の降雨によって沼地が氾濫し、小さな一時的な池を満たし、このユニークな生息地の植生を復活させるのに役立った。

この地域は、10年以上に亘って平均以下の降雨量であった。この状況は過去3年間で更に深刻になり、年間降水量の合計が最少を記録した。全国各地で異常に高い気温が干ばつ状態を悪化させた。2024年1月はスペインで記録上最も暖かく、気温は平均より摂氏 2.4 度高く、2024年第1四半期は、1961年に記録が始まって以来、最も暖かかった。

2024年3月下旬の豪雨は、アンダルシア地方のドニャーナ国立公園にいくらかの安堵をもたらした。これらのイメージは、湿地がほぼ干上がった2023年4月15日(左)と、雨が降った後の2024年4月9日(右)の同じ地域を比較したものである(比較は下記原典から)。それらはランドサット8号と9号によってとられた。

公園内の気象観測所の記録では2024年3月には145ミリメートルの雨が降り、記録上2番目に雨の多い月となった。2023年9月から2024年8月までの1年間の水量としては、既に400ミリ超が降っている。これは過去3年間の降水量を上回っているが、それでも過去の年間平均である500ミリメートル超は下回っている。

--- 以下略。

<ひとこと>: 大判はイメージをクリック(タップ)。記事は抜粋です。

<出典>: Earth Observatry

5月7日(火)
タンザニアを襲う破壊的な洪水

タンザニア、ケニア、ソマリアを含むアフリカ南部が長引く干ばつに見舞われる中、2024年4月の豪雨によって東アフリカ諸国に深刻な洪水が発生した。タンザニアでは、洪水や土砂崩れによって、数百人が負傷し、150人以上が死亡し、数千棟の建物が損壊した。ケニアとソマリアの豪雨も危険な洪水を引き起こし、何万人もの人々が避難を余儀なくされ、農地が浸水した。

ダル・エス・サラーム(Dar es Salaam)の南約130キロにあるタンザニアのルフィジ(Rufiji)地区は、特に大きな被害を受けた地域の一つだった。洪水によって、何万人もの人々が、食料、避難所、清潔な水、医療を必要としている。約 34,000 ヘクタールの作物も被害を受けたと、地区の委員は4月10日にレポートしている。

2024年4月29日までに雲が晴れ、ランドサット9号衛星の OLI-2 (Operational Land Imager-2)がルフィジ川とそのデルタ沿いの洪水のイメージ(右)をとった。比較のために、2023年5月5日の、ランドサット8号のイメージ(左)は、ルフィジがかなり低い段階にあることを示している。3月から5月までの特に「長雨」によって川は氾濫する傾向があるが、この地域は、2023年後半の短い雨と、2024年の長雨の両方を受け、この極端な現象を引き起こした。

2023年6月にエルニーニョ現象が再来する前には、タンザニア、ケニア、ソマリア、エチオピアの多くの部分が数年間干ばつを経験した。しかしながら、エルニーニョ現象は、アフリカ東部で降水パターンを変化させ雨を激しく、南の国々は通常より乾燥させる傾向にある。

<ひとこと>: 左上のイメージはタンザニアのルフィジ(Rufiji)の2023年5月5日と2023年6月の比較、下のリンクから。右のイメージは動画、リンク先から。

<出典>: Earth Observatry

5月2日(木)
春の洪水を追う

ランドサット9号から強化されたカラー画像で、2024年4月13日に、ウラル川の水位はピークに達した。ここでは、植生は赤く、水は青緑色に見える。大雨と急激な雪解けの後、ロシア南部とカザフスタン北部の川が増水し、家屋が浸水し、何千人もの人々が避難を余儀なくされた。

ランドサット シリーズの最新衛星であるランドサット9号は、地球の健康とその状態を監視するための国際戦略に不可欠な要素であり、より頻繁な観測を可能にしている。ランドサット9号のデータは、都市の拡大、サンゴ礁の劣化、自然災害などの重要な分野での意思決定に役立てることができる。

<ひとこと>: 大判はイメージをクリック(タップ)。

<出典>: Monika Luabeya(著者名です)

5月 1日(水)
NASA、地球および気候変動に関する航空機主導の新しい調査を選ぶ

NASAは、火災がつくり出す雲、北極圏沿岸の変化、大気質、地滑りの危険性、氷河の縮小、農地からの排出物に関する国内外の調査を含む六つの新しい空中ミッションを選択した。NASAの一連の空中ミッションは、科学者達が軌道上から見たり、地上から測定したり、コンピューターモデルでシミュレーションしたりするものを補完する。

IAEA の Earth Venture 計画を通して資金提供を受けたこのミッションは、航空機に搭載された機器を使って、衛星よりも細かな空間分解能と短い時間のスケールによる、より詳細な測定を行うことを中心としている。この競争的に選ばれたミッションは、衛星観測を補完し、革新的な測定を行う機会を提供する。

約1億 2,000 万ドルが六つのミッションに割り当てられており、2026年から2029年にかけて、様々な時期に展開される予定である。

<ひとこと>: 大判はイメージをクリック(タップ)。

<出典>: Michael Carlowicz(著者名です)

4月30日(火)
NASAの人工知能とオープンサイエンスの取組みが     
      どのように気候の変動と闘っているか

気候の変動によって世界中で異常気象が増加し、温暖化が進む地球の調査の必要性も高まっている。NASAにとって、これらの気象の調査は、事象の調査を行うだけでなく、外部の研究者達にも同じことを研究する権限を与えることが含まれている。NASAが主導する人工知能(AI)の取り組みは、これらの目標を達成するための強力なツールを提供する。

2023年、NASAは、 IBM Research と共同で、AI地理空間基盤モデル(AI geospatial foundation model)を作成した。このモデルは、広く使用されているNASAの膨大な量の Landsat と Sentinel-2 データでトレーニングされており、環境問題に取り組むためのAIを活用したさまざまな研究の基盤を提供している。このモデルは、オープンサイエンスの原則に沿って誰でも自由にアクセスできる。

基礎モデルは、科学者達が多様なアプリケーションを開発するためのベースラインとして機能し、強力で効率的なソリューションを実現する。これまでに、共同研究者とともに、焼け跡の検出、洪水の描写、作物やその他の土地利用カテゴリの分類のために地理空間基盤モデルを微調整することで、その機能を実証してきた。

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<出典>: Lauren Leese(著者名です)

4月26日(金)
アフリカ南部の深刻な干ばつ

2024年初頭、アフリカ南部で、長引く干ばつによって農作物が焼け、何百万人もの人々の食料安全保障が脅かされた。干ばつは、成長期の間の降雨パターンの変動、現在進行中のエルニーニョ現象によって大きく煽られている。

カリフォルニア大学の気候ハザードセンター(CHC)の研究者によれば、1月下旬から3月中旬にかけての、南部アフリカの一部は通常の降雨量の半分以下だった。2024年2月は特に乾燥した。上の図は、1981年から2024年にかけての。その月の降水量を平年値の割合で示している。

降水量は通常、12月から2月にかけて最も多くなる。しかし、研究者達のデータ分析では、2024年2月は、ザンビア、ジンバブエ、アンゴラ南東、北ボツワナの多くに広がるエリアで、この40年のデータ記録で最も乾燥した2月だった。

この乾燥した状況は、穀物が成長のためにまた粒をつくるために十分な水を必要とする危機的な時にもたらされた。不十分な雨と高い温度は数カ国で不作を招いた。南ザンビアの中央では、2月末までに、この国のトウモロコシの生産エリアのほぼ半分の100万ヘクタールでトウモロコシが枯れて死んだ。

この乾燥した期間にはまた家畜にも影響を及ぼした。ジンバブエでは、干ばつに関連して 9,000 を超える牛の死が報告され、また、120万以上の牛が、牧草地と水の不足のために高いリスクと死の危険性があると考えられている。

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<出典>: Earth Observatry

4月25日(木)
春の洪水が中央アジアを襲う

2024年4月、ロシア南部とカザフスタン北部では、大雨と急速な雪解けにより河川が増水した。洪水は数千の家屋を浸水させ、伝えられるところによるとウラル川やその他の主要な河川沿いの都市から 200,000 人以上の住民が避難した。4月5日、モスクワの東約 1,800 キロにあるロシアのオルスク近郊で、ウラル川の水位が数メートル上昇し、市内のダムが決壊した。川の水位は 9.6 メートルまで上昇し、ダムの水位は 5.5 メートルになった。

その後数日間、この大洪水は数百キロ下流に被害をもたらす洪水を引き起こした。人口50万人以上の都市、ロシアのオレンブルクの広い地域に水が押し寄せた。ニュース報道によると、約 3,000 戸が水没し、少なくとも 7,700 人避難した。ウラル川の水位は12メートル近くに達し、「臨界」とされる水位を 2.5 メートル上回った。

イメージは、洪水が到来する前の4月5日(左)と、川の水位がピークに達した4月13日(右)のオレンブルクを示し、青緑色に見える水の存在を強調し、植生が赤く表示されている。

ロシアのウラル地方南部とシベリア西部地域、カザフスタン北部の河川の水も同様に異常に達し、ロシアのクルガンでは、トボル川の堤防が決壊し、何千人もの人々が避難を余儀なくされた。

<ひとこと>: 左右のイメージの比較を見るには下のリンクから。

<出典>: Earth Observatry

4月18日(木)
NASA、エルニーニョが沿岸の塩分を変化させるのを見る

新たな知見によって、陸上の流出量や降雨量の変化に非常に敏感な沿岸域が明らかになった。

2023年に記録的な猛暑に見舞われ、この冬は米国の大部分を水浸しにした後、現在のエルニーニョ現象は、今春、勢いを失いつつある。科学者達は、この気象現象が、他に、地球にどのような痕跡を残すか、具体的には、沿岸の水の化学的な性質をどのように変えるかを観察した。

NASAのジェット推進研究所のチームは、衛星観測を使って、2011年から2022年までの10年間、世界の海面の溶存塩分(塩分)を追跡した。海面では、淡水が、陸地、海洋、大気の間でどのように落下し、流れ、蒸発するかについて、塩分濃度のパターンから多くのことが分かる。

チームは、海岸線付近の塩分濃度の年々の変化が、エルニーニョとそれに対応するラニーニャの総称であるエルニーニョ南方振動(ENSO:El Niño Southern Oscillation)と強く相関していることを示した。 ENSO は、世界中の気象に、対照的な方法で影響を与える。エルニーニョ現象は、太平洋赤道域の海水温が平年より高くなることと関連しており、米国南西部では平年よりも多くの雨や雪が降り、インドネシアでは干ばつをもたらす可能性がある。これらのパターンは、ラニーニャの時期にはやや逆転する。

例えば、2015年の例外的なエルニーニョ現象の際には、陸地の降水量が少ないと河川の流量が平均して減少し、その結果、海岸から200キロメートル離れた地域で塩分濃度が著しく上昇したという、地球規模の水循環の影響が追跡された。

川は雨水を何百キロメートルも海に流し、科学者達がまだ発見していない方法で沿岸の水の構成を変えることがある。2023年12月に撮影されたこの衛星画像(左上の図)では、ミシシッピ川からの堆積物に富んだ大きなプルームが、冬の雨の後、ルイジアナ州とテキサス州のメキシコ湾岸に広がっている。

また、陸地の降水量が平年より多い地域では、河川の流量が増加し、海岸付近の塩分濃度が低下した。

研究チームは、海岸近くのこれらのダイナミックな帯域では、外洋よりも塩分濃度の変動が少なくとも30倍大きいことを発見した。雨、川、塩分の関連性は、ミシシッピ川やアマゾン川などの大きな河川の河口で特に顕著であり、淡水の煙が海に噴き出すときに宇宙からマッピングできる。

信号としての塩

地球温暖化に伴い、研究者達は極端な降水現象や流出量の増加など、水循環の変化を観察してきた。陸と海が交差する沿岸水域は、影響が最も検出しやすい場所かもしれない。

降雨と流出に対する感受性を考えると、沿岸の塩分濃度は一種の指標として機能し、水の循環に展開している他の変化を示している可能性がある。

彼女は、人口の約40%が海岸線から約100キロメートル以内に住んでいるにもかかわらず、世界の沿岸水域のいくつかは十分に調査されていないと指摘した。その理由の一つは、河川水位計やその他のオンサイトモニターは維持費がかかり、特に遠隔地では地球全体をカバーできないことである。

そこで衛星観測機器の出番である。2011年に打上げられたアクエリアス・ミッションでは、海洋のマイクロ波放射の微妙な変化を検出するために、非常に高感度の放射計を使用して、海面の塩分濃度を宇宙から世界的に観測した。アクエリアスは、NASAとアルゼンチンの宇宙機関である CONAE (Comisión Nacional de Actividades Espaciales)のコラボレーションだった。

現在は、欧州宇宙機関の、土壌水分・海洋塩分(SMOS)ミッションとNASAの土壌水分アクティブ・パッシブ(SMAP)ミッションという二つの高解像度ツールによって、科学者達は、海岸線から40キロメートル内までズームインすることができる。

研究者達は、三つのミッションすべてのデータを用いて、沿岸水域の表層の塩分濃度が毎年3月に世界最大値(34.50 実用塩分単位、PSU)に達し、9月頃には世界最小値(34.34 PSU)に低下することを明らかにした。

外洋ではサイクルが異なり、表層塩分濃度は2月から4月にかけて世界平均の最小値(34.95 PSU)、7月から10月にかけて、世界平均の最大値(34.97 PSU)に達する。外洋は、かなり大量の水を含み、河川の流量や ENSO の影響を受けにくいため、季節や年による変動はそれほど多くない。その代わり、変化は、地球規模の降水量から全球蒸発量を差し引いた値と、大規模な海洋循環などの他の要因によって支配されている。

この研究成果は、学術誌「Geophysical Research Letters」に掲載された。

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<出典>: Jet Propulsion Laboratory

4月17日(水)
エルニーニョによって、2023年の世界の海面水位が急上昇

NASAの分析によれば、世界の平均海面水位は2022年から2023年にかけて約 0.76 センチメートル上昇したが、これは主に気候の温暖化と強いエルニーニョ現象の発生によって比較的大きな上昇となった。この水位の上昇は、スペリオル湖の4分の一が1年間で海に流出するのに匹敵する。

このNASA主導の分析は、1992年に打ち上げられた米国とフランスの TOPEX/ポセイドンミッションに始まる30年以上にわたる衛星観測を特徴とする海面データセットに基づいている。2020年11月に打ち上げられた Sentinel-6 ミッションは、この海面水位記録に貢献した一連の衛星の最新である。

このデータは、1993年以降、世界の平均海面が合計で約 9.4 センチメートル上昇したことを示している。この増加率も加速しており、1993年の年間 0.18 センチメートルから現在の年間 0.42 センチメートルに倍増している。

現在の加速度では、2059年までに、世界の平均海面水位がさらに20センチメートル上昇し、今後30年間の変化量が過去100年間と比較して2倍になり、世界中で洪水の頻度と影響が増加すると言われている。

<ひとこと>: 右下のイメージのリンク先は動画(.mp4)です。

<出典>: Jet Propulsion Laboratory

4月16日(火)
シエラの雪の「驚くほど平均的な」年

山岳地帯の雪といえば、シエラネバダ山脈は好・不況で知られており、昨年は記録的な大雪をもたらしたが、その前の3年間は積雪量が少なかった。シエラネバダ山脈の積雪量は、10年以上にわたって異常に雨の多い年や異常に乾燥した年が続いた後、2024年にはほぼ平年並みになった。

カリフォルニア州水資源局(DWR)によると、シエラ山脈全体の積雪は、2024年4月1日の平均110パーセントであった。

イメージは、NASAのテラ衛星の中分解能イメージング分光放射計(MODIS)の、シエラネバダ山脈の降雪を示している。

前回、4月1日に積雪量が平年並みになったのは、2010年の104%だったときであり、これに対して、2023年4月1日には平年の232%だった。

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<出典>: Earth Observatry

4月15日(月)
ウィルキンス棚氷は弱まっているか?

ウィルキンス棚氷は、南極半島の西にあるいくつかの大きな島に隣接している。大陸棚の北側の氷河前線は、1990年代以降、急激な分裂を繰り返しており、それ以来、定期的に氷山を剥がしている。

一方、米国地質調査所の地図によれば、棚の南側の氷面は歴史的に安定している。しかし、科学者たちは最近、ここでも構造的な弱点の兆候に気づいており、棚の安定性の変化を示唆している可能性がある。その結果、科学者達はウィルキンスを注意深く観察し、それがどのように変化しているかを追跡している。棚氷の減少は海面上昇に直接寄与するものではないが、気候変動の重要な指標であり、内陸氷河の海側移動を遅らせる。

2024年1月24日(左図の左または右上図)と3月15日(左図の右または右下図)に取得されたこの画像ペアには、最新の変更点の一部が表示されている。このイメージはNASAのテラ衛星の MODIS で撮られた。この地域は例外的に曇りが多く、このような雲のない景色はめったにない。ウィルキンス棚氷には小さな穴が開いていて、その下にある海が露出していることに注目しよう。この奇妙さは何十年も続いており、稀な現象であると考えられている。

また、どちらのイメージにも、海氷と小さな氷山が混在しており、北側の氷河の前面に密集しているのが見える。3月15日のイメージで最も大きいのは氷山ではなく海氷である。比較すると、ラタディ島とアレクサンダー島のエロイカ半島の間にある南側の氷河前面近くの湾は、南半球の融解期には海氷が比較的ない状態を保っている。これはこの地域では典型的な現象であり、科学者達には、現在、ウィルキンス棚氷の両側の海氷量の違いの原因は不明である。

3月15日、別の氷の形である氷山が南の氷の前線から漂流した。棚のこの部分から欠けている三角形の氷のくさびが、エロイカ半島近くの入り江に漂う長さ 7.4 キロメートルの山を生み出したことに注目しよう。同日のエリアの詳細図を下のイメ―ジに示す。このイメージはランドサット9号の OLI-2 (Operational Land Imager-2)で撮られた。

詳細な視界には、新しいくさび形の開口部の近くに棚を横切って湾曲する最近の裂け目が表示されている。ゴダード宇宙飛行センターの氷河学者クリストファー・シューマン氏によると、こうした亀裂のいくつかは2022年とほぼ同時期に形成され、棚はそれまで安定化に役立っていた名前のない氷の上昇との接触を失った。

コロラド大学のジュリー・ミラー氏によると、2016年以降、南部の氷河前線に沿った後退が加速したという。それ以来、氷の損失は約150平方キロメートルに達した。彼は、この後退の原因として、最近の記録的な地表気温の上昇と、南極半島での一連の極端な融解現象が原因だと考えている。

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<ひとこと>: 下記リンク先から、左上のイメージの中間の縦のラインを移動して、比較してご覧ください。

<出典>: Earth Observatry

4月4日(木)
メキシコ南部の火災

メキシコは2024年3月に山火事のピークシーズンに入り、乾燥した温暖な気候により、全国で100件以上の活発な火災が発生した。このイメージは、メキシコ南部のオアハカ州(西)とチアパス州(東)の国境付近で発生した火災の煙を示している。

ランドサット9号は現地時間2024年3月27日午前10時30分(世界時間16時30分)頃にイメージを取得した。イメージは、ナチュラルカラー(バンド 4-3-2) のピクセルを重ね合わせたファルスカラーの火災前線に関連するホット・スポットを強調している。

メキシコの国家林業委員会(CONAFOR)によれば、3月27日に、メキシコ全土で120件の火災が発生した。暫定データによれば、その日の火災はメキシコの31州のうちの19州で、 7,000 ヘクタール以上に影響を与えた。

写真の火災は、チアパス州の州都で最大の都市であるトゥストラ・グティエレスの西約100キロに位置する植生を燃やした。今シーズンの過去の火災は、致命的なものを含む主要な都市部の近くで燃えている。

メキシコの山火事シーズンは一般的に2月に始まり、3月中旬から5月頃にピークを迎える。2024年2月には、暖かく乾燥した条件で燃焼の準備が整う。長期の干ばつは、その月の雨からほとんど救済され、全国平均気温は平年より摂氏 0.3 度高く、記録上13番目に暖かい2月になった。

2024年3月に発表された季節的な火災の見通しでは、5月までは暖かく乾燥した状態が続くほか、メキシコのすべての山岳地帯で火災活動が増加し、火災の可能性が高まると予想されている。

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<出典>: Earth Observatry

3月29日(金)
東アフリカの熱波

2024年3月、東アフリカを熱波が襲った。猛暑のため、政府関係者は南スーダンの学校を2週間閉鎖するなど、緊急安全対策に訴えることを余儀なくされた。

3月中旬にはこの地域に猛暑が広がり、特に南スーダンで猛威を振るった。3月16日、気温が摂氏41度から45度の予報を受け、2週間続くと予想されたために一時的に学校が閉鎖した。

南スーダンの厳しい暑さは乾季の間の平均最高値摂氏37度を超えた。首都ジュバの一部の住民は、電力の需要の増加により扇風機なしで暑さに耐えた。報道では、過度の暑さによる死亡事件が報告されている。

上の地図は、2024年3月18日の東アフリカの気温を示している。

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<出典>: Earth Observatry

3月28日(木)
北極海の海氷、減少し続ける

地球上の海氷は2024年も縮小と薄化が続いている。北極海における冬の氷の最大面積は46年間にもわたって減少し続けている。

衛星による観測結果を解析した結果、3月14日には北極海の海氷面積が 1,565 万平方キロメートルに達したことが分かった。これは、1981年から2010年までの平均最大面積よりも氷が 640,000 平方キロメートル少ない。北極圏の冬季の氷の最大面積は、1979年以降、全体としてアラスカの面積に匹敵する面積で縮小している。

上の地図は、年間最高気温の日である3月14日の氷の面積を示している。海氷の面積を決定するために、科学者達は衛星による海氷の観測データをグリッドに投影し、少なくとも15%の氷に覆われた各セルの総面積を合計します。黄色の枠線は、1981年から2010年までの2月の海氷面積の中央値を示している。中央値は中間値である。つまり、範囲の半分は黄色のラインより大きく、半分は小さくなっている。

この分析は、NASAと米国海洋大気庁(NOAA)が共同で運用する Nimbus-7 衛星と、国防気象衛星プログラムの衛星に搭載されたマイクロ波センサーで収集されたデータに基づいている。

このチャートは、2024年3月中旬までの日次海氷面積を、過去最低を記録した2017年(オレンジ)と1981年から2010年の平均面積 (青) と比較したものである。今年の北極の氷の極大は観測史上14番目に低い。複雑な気象パターンによって特定の年に何が起こるかを予測することは難しい。

NASAとコロラド大学ボルダー校の国立雪氷データセンター(NSIDC)の科学者達は、海氷が地球の極地の生態系を形成し、地球の気候に重要な役割を果たしているので、これらの季節的および年次変動を追跡している。

夏、海氷が増えると太陽の放射を反射し、地球を涼しく保つのに役立つ、逆に、氷が収縮すると、地球は太陽熱の影響を受けやすくなる。露出した海は暗く、太陽放射を容易に吸収し、そのエネルギーを捕捉して保持し、最終的に地球の海洋と大気の温暖化に寄与する。

両極周辺の海氷は、十数年前よりも天候の影響を受けやすくなっている。NASAのレーザー高度計で収集された氷の厚さ測定 ICESat-2 衛星は、暖かい季節に残存する氷が少なくなっていることを示している。つまり、古い氷の上に厚い氷を作るのではなく、毎年新しい氷をゼロから形成しなければならないのである。また、氷が薄いほど、数年かけて堆積するよりも融解し易い。

氷の面積は100万平方キロメートル以下に減少し、北極海の大部分は太陽の温暖化のまぶしさにさらされることになる。

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<出典>: Earth Observatry

3月25日(月)
アパラチア山脈の火災

2024年3月、米国大西洋岸中部の州で数十件の火災が発生した。突風と低湿度によって、山火事は、バージニア州とウェストバージニア州の最大級の火災と共に、メリーランド州からノースカロライナ州に至るまで報告された。

3月21日、バージニア州の消防士達は、48時間の間に100件を超える山火事に対応したと言った。火災は 3,000 ヘクタール以上を燃やした。NASAのテラ衛星(注:地球観測衛星)の MODIS センサーは、その日の火災から流れ出る煙のイメージを撮った。

3月20日、バージニア州バーグトン近郊で火災が発生し、約 2,000 エーカーが焼失し、送電線上の倒木が原因だと語られた。

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<出典>: Earth Observatry

3月22日(金)
NASAが山火事の所在を突き止める

世界的に見ると、ほぼすべての山火事は、落雷や野生動物が電力機器に遭遇する原因ではなく、人間の発火源から始まる。人間が主な原因であることを知ることは、山火事の予測と防止に役立つ知識の一例であり、NASAと消防業界が協力して取り組んでいる課題である。

アイルランドのようなほとんど経験のない国で山火事が一般的となり、また気象変動の影響を受けるその他の地域ではより激しくなるため、政府や企業は宇宙に助けを求めている。

ランドサット衛星による地球観測データ、人工知能、機械学習によって火災の予測と監視が行われ、火災後の復旧が支援されるようになった。サンディエゴを拠点とするテクノシルバ社(Technosylva Inc.)は、これらすべての技術を組み合わせた山火事監視サービスを消防士達に提供している。同社はまた、シリコンバレーにあるNASAのエイムズ研究センターがまとめた他のNASA火災データリソースも使用して、火災シーズン中またそれ以降にも役立てている。

テクノシルバは、気候、気象、景観、人的インフラなど、複数のデータソースを統合するデータ融合を使って、現在の火災リスクの全体像を把握している。山火事の季節が始まる前に、これらの取り組みは、コミュニティをより安全にするための、より回復力のある景観の開発に役立つ。火災の季節には、モデルが火災の広がり方を予測し、広大な土地をリアルタイムで追跡する機器と人員を提供する。

2017年にチリで発生したラス・マキナスの山火事---その周囲を宇宙からしか見る方法がなかったほど大規模な火災---では、テクノシルバは衛星データを提供して新たな熱源の特定と誘導による封じ込めの取り組みに協力し、消火活動を支援した。

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<出典>: Margo Pierce(著者名です)

3月21日(木)
北極圏は雨が多くなっている

北極圏は雨が雪として降るような低温で知られている。しかし、気温が上がるにつれてその雪は雨に代る。これらの変化は、北極の海氷や北半球全体の気象パターンに影響を与える可能性がある。

NASAの科学者達は、1980年から2016年にかけて、北極海と北大西洋で降雨の傾向の調査し、雨の日の頻度が増加していることがわかった。また、毎年の雨季の長さが長くなっていることもわかった。この研究成果は気象ジャーナル(Journal of Climate)に掲載された。

最も劇的な変化は北大西洋で起こり、36年間の調査期間の終わりには、10年間に平均5日多く雨が降った。調査対象地域の残りの部分(北極海中央部とその周辺海域)では、10年間に平均2日雨の日が増加した。これは、地球の他の部分よりも4倍の速さで北極圏の気温が上昇していることによるものである。

図は、NASAのアクア衛星を含む、10年単位の、年間の雨の日数の変化によって、北極の降水量の傾向を示している。

ここでは、北大西洋の大部分が濃い青色で示されており、水色の地域と比較して、1980年から2016年の年間の降水日数の増加が大きいことを示している。ノルウェーの北のバレンツ海とシベリアの北のカラ海も深い青で示されている。

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<出典>: Earth Observatry

3月19日(火)
グレートバリアリーフの暑熱ストレス

2024年3月8日、オーストラリアのグレートバリアリーフは、熱ストレスによる広範囲にわたるサンゴの白化現象が確かめられた。これは、2016年以降5番目のサンゴ礁の大規模な白化である。

サンゴの健康状態を監視するグレートバリアリーフ海洋公園局が実施した300以上のサンゴ礁の空中調査では、サンゴ礁の3分の二に及ぶ浅瀬で白化が見られた。

グレートバリアリーフは、オーストラリアのクイーンズランド州の北東海岸沖にあり、地球上で最も豊かで生物の多様性に富んだ自然生態系の一つである。珊瑚海の346,000平方キロメートルに広がり、2,500の個別のサンゴ礁と900以上の島々で構成されている。

白化(Bleaching)現象は、平均よりも高い海水温が継続することによって引き起こされる。サンゴは光合成藻類と共生関係にあり、褐虫藻(zooxanthellae)は、サンゴのポリプ(coral polyp)に栄養素と鮮やかな色を提供する。熱ストレスは珊瑚が褐虫藻を放出する原因になり、骨格構造を「白化」した外観にする。

この図は、2024年3月4日のオーストラリア東部沖の海面水温の偏差を示している。

水温の高さから珊瑚礁への危険を評価するために使われる一般的な測定基準は、海表面温度が摂氏1度平均の月の最大温度を上回る週の数に因っている。 顕著な珊瑚の白化は、4週間の高い熱の後生じ、厳しい、広範囲にわたる珊瑚の白化は、そのような8週後に起きるだろう。

礁当局によれば、3月上旬、この礁の複数の地域が8~10週の間通常より高い熱にさらされた。このマップは、3月4日の、東部オーストラリア沖の海表面温度の異常を示している。これは、国際的な衛星観測、船舶およびブイ観測による、複数のNASA、米国海洋大気圏局から海表面温度の測定をベースにした、ジェット推進研究所のMUR SST(Multi-scale Ultra-high Resolution Sea Surface Temperature)プロジェクトのデータに基づいている。

以前のサンゴ礁の大規模な白化現象は、1998年、2002年、2016年、2017年、2020年、2022年に発生した。オーストラリア海洋科学研究所によれば、グレートバリアリーフの500年にわたるサンゴの歴史の記録に、このような広範囲にわたる出来事の証拠はない。

2023年後半から2024年初頭にかけて、太平洋の貿易風が弱まり、西太平洋からの暖かい海水が東太平洋に押し寄せるようになった。エルニーニョと呼ばれるこのパターンは、人為的な気候変動に加えて、世界の平均海面水温を過去最高に押し上げた。
但し、エルニーニョ現象とオーストラリア東部沖の海面水温の関係は更に複雑である。

--- 以下略。

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<出典>: Earth Observatry


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