彗星、小惑星探査について

彗星、小惑星の調査には大きく分けて二つの目的がある。

一つは、地球のようにある程度の大きさのある天体が自身の重力やそれに伴う熱などによって形や組成が変化してしまうのに対して、彗星や小惑星は小さいがゆえに古代の特質をそのまま保持している。即ち彗星や小惑星の調査は太陽系の生い立ちを調べる学問的見地からの調査対象である。
他の一つは、彗星や小惑星の地球への接近や衝突などの危険回避のための調査である。現在地球に危険を及ぼす可能性のある小惑星は1923(2018年9月1日現在)が確認されている。

かっては前者に関連する調査が主流であったが、最近では後者を目的とした探査が増えている。NASAでは近未来の有人探査の目標として火星の他小惑星を挙げている。なお、今ではその軌道予測精度が向上し、NASAを中心に軌道が的確にとらえられるようになり、現時点では地球と衝突する危険が確認されている天体はない、しかし、過日のロシアでの隕石爆発に見られるように、検出できない例もあるので油断はできない。

1. 所謂白亜紀に、巨大な隕石(あるいは彗星、小惑星)が地球に衝突して恐竜を死滅させたことは、今ではほぼ定説となりつつある。この物体は径10キロメートルほどで、メキシコのユカタン半島にクレータの遺跡が確認されている。このような大きな天体の衝突は数百万年に1度の割合で起きるとされている。
2. 1994年、シューメーカー・レヴィ第9彗星が木星に衝突する様子が確認された。この事実はその後の、彗星、小惑星探査に大きな影響を与えることになったので少々詳しく解説しよう。
木星に激しく接近したシューメーカー・レヴィ第9彗星は、木星の強い重力で砕かれ、次々に木星に引き込まれた(図1)。木星は地球の11倍ほどの大きさの外面を雲で覆われた惑星であるが、この時に外面に見られた衝突による噴煙は、優に地球を超える大きさであった(図2)。以来、天文学者達の間で彗星や小惑星の調査の必要性が強く意識され、地球近傍天体調査プロジェクトが世界的規模で組織化されるようになった。

砕けて引き込まれる彗星木星の雲に現れた衝突の噴煙

3. 最近のロシアでの隕石の空中での爆発は記憶に新しい。この日はより大きな別の小惑星の接近が報じられており通過も確認されたが、落下した隕石の接近には誰も気づかなかった。

 

 以下は、欧州宇宙機関の記事 を中心に要約した、小惑星および彗星探査の概要である。
(青は現在活動中の探査機) 

(2018年9月10日)

・・・・・  小 惑 星  ・・・・・

宇 宙 船開 発探 査 天 体探 査 内 容打上時期
ガリレオ(木星探査衛星)NASAガスプラ&イダ通過観測1989年
カッシーニ(土星探査衛星)NASAマサースキー通過観測1989年
NEARシューメーカーNASAマティルド&エロスエロス周回1996年
ディープ・スペース1*NASAブライユ&ボレリー彗星接近観測1998年
スターダスト*NASAアンネフランク接近観測1999年
はやぶさJAXAイトカワサンプルリターン2003年
ロゼッタ*ESAシュテインス&ルテティア周回観測2004年
ニュー・ホライズンズ(冥王星探査衛星)NASAAPL通過観測2006年
ドーン*NASAケレス(矮惑星)&ベスタ周回観測2007年
嫦娥2号(中国)トータティス不明不明
はやぶさ2JAXAりゅうぐうサンプルリターン2014年
オシリス・レックスNASAベンヌサンプルリターン2016年
*印は矮惑星・小惑星・彗星など複数の天体を調査した宇宙船(二つの表に記載があるので注意)。
ガリレオ、カッシーニ、ニュー・ホライズンズは惑星、矮惑星探査に向かう途上で立ち寄り調査。

・・・・・ 彗   星 ・・・・・

宇 宙 船開 発探 査 天 体探 査 内 容打上時期イメージ
国際彗星探査衛星(ICE)NASAジャコビニジンナ&ハレー接近観測1978年
ベガ1号・2号ロシアハレー接近観測1985年
サキガケ・スイセイJAXAハレー接近観測1985年
ジオット(Giotto)ESAハレー&グリッグ・シェレルップ接近観測1985年
ディープスペース1*NASAブレイユ&ボレリー接近観測1998年
スターダスト*NASAビルドⅡ&テンペル1ビルドⅡのサンプル持帰り1999年
コンツアー
(Comet Nucleus Tour)
NASA (不成功)2002年
ディ-プインパクトNASAテンペル1&ハートレイ2
ガラード&アイソン
テンペル1の粉塵を収集分析
ガラード、アイソンは拡張ミッション
2005年
ロゼッタ*ESA彗星67P/チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星周回調査
着陸船フィラエ投下(2014年11月)
2004年